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FLYING航海記3

船頭 水野範彦

6月12日 晴 3晩ご厄介になった出島ハーバーの舫をとき,三菱ドックで新造している,豪華客船を見ながら出港。今日もガスがかかっている。港外に出るとすぐ逆潮。さすがに野母埼付近は漁船が多い。今日は大潮,天草灘から小浜港に向かうと逆潮1~3ktもある。風はなく機帆走協会に逆戻りする。望遠鏡で小浜港を探すが全然判らない。そこえ鈴木さんからTelあり『ヨットが見えた。11時方向へ向え』との陸からの指示に従い港外の養殖筏をかわし港を見ると5m位しか入口がないみたい。本当に入れるかな?と思案していると『左から大きく回れ』との指示のTelに従い,20m位入り口が見え入港。小さな港に,立派なポンツンがあり『flying』1艇で占領。本航海4回目の潜りを開始。しっかり潮目を見て海藻を避けてきたつもりだが,どうも見えない海面下の藻を拾うんではないかな?としか思えない。プロペラに大敵のビニールを拾はなかったのは幸としようか。小浜ヨットクラブ会長の経営されてる,港から歩いて1分の立派な日本式旅館へ行き夕食。
6月13日 曇り 朝4時半ごろオカシナ音がするので見ると,知らない間に漁船がついていて,バウが漁船に当っている。他の船のことに,気を使はない漁船もあるものだ。港外へ出て後ろを見た鈴木さんが,港の入口が判らないというのが,始めて判ったと仰せになる。今日も機帆走。天草下島のどこかへ入ろうとシマダスを見ていたら,下田温泉センターというのがあって,下田港のすぐ傍にあるので決定。しかし昨日と同じで,港湾案内に載ってないし,入口が判らない。たまたま漁船が入っていくのを見つけ,後ろをつけて入港。川と港を防潮提で仕切ってある。漁協横の1等地に付けるよう指示され,感謝する。昼食を済ませて上がろうと思ったら岸壁は見上げるばかり上にある。干満の差が,今日は4,2mと潮汐表に書いてある。膝に擦り傷をこしらえて,やっと岸壁に上がった鈴木さんは観光にお出かけ,私は昼寝,夕方少し潮が上がって下田温泉公衆浴場に行く。町外の人は200円、いい湯だった。ここの漁師は,水揚げを地元で消費する分を除いて,島の反対の本渡町まで車で出荷するんだそうだ。えらいことだ。港の外から見たしゃれたホテルは,歩いて1分のジャルデリンマール望洋閣と言うシャレタ名前の立派なホテルだが,客はあまりいないようだった。が港に入るには良い目標だ。
6月14日 晴 何時までいても良いと言うて戴いて,上げたくない尻を上げて出港、クオーターから良い風が吹いているが波、ウネリが大きいので,1ポンリーフのメインのみで5ktで走る。シマダスで見た牛深温泉へ行くことにし,牛深港へ向かう。昼食後無料シャトルバスで,温泉センターへ向かう。400円で露天風呂が,自然そのままで素晴らしい。TVを見て,日本のサッカーが2-0で勝ったのを見て帰る。帰りのバスの中で声をかけられた『ヨットの方ですか?』偶然冨貴ヨットハーバーで『flying』が上架していたとき,やはり上架していた西林さんで,偶然九州の港であったことに吃驚する。港の牛深海彩館のいさり火市場で,天草の鯵は関の鯵に負けないといわれて,40cm近い鯵を2匹活作りにしていただく。たった1,000円。2階の海の見える系列のレストランに持ち込み,久しぶりの日本酒で戴く。海の見える眺めと,味の良い鯵で,刺身のみで満腹してしまう。夕食後西林さんと歓談,ご夫婦での航海,羨ましい限りでした。
6月15日 晴 風なく機帆走で上甑島の里港に向かう。鈴木さんの体調が1昨日から悪く,入港後休養のため,温泉のある里村交流センター甑島館に宿をとられる。下田温泉で4回も温泉に入られた湯疲れか、慣れないクルージングの為か,何でも見てやろうと歩き回られた所為か?。私は船で宿題に励み,読書を楽しむ。水深が6mもあるのに,底まではっきり見え,綺麗な熱帯魚が泳いでいる。夕方温泉に行こうと思って外に出ると,岸壁は頭の上,あっさり諦めて,ありあわせのつまみで夕食。

 

日の出を見ながら

6月16日 晴 良い風をもらってセーリング中,突然スピードが落ち,又プロペラに藻でもかかったかと思い,後ろを見て驚いた。茶色の蛇見たいのがヨットから伸びている。セイルを降ろし,よく見るとロープだ。ボートフックでロープを端から手繰り、やっとの思いではずす。6cm位の太さの60m位の長さのロープだ。ヨットに積んで持っていこうかと思ったが,次の港で『こんなものを持ってきて,ほかって行くのか!』と怒られそうで,ほかった漁船に引っかかるよう祈りながら,海へ戻す。スピンに変えセーリング,昼飯と同時に風がなくなり、上り1ぱい,今日もセーリングを楽しむ。4時になったので坊津へ入る。ここも底まで見える。碧南がこんな綺麗になるのは何時のことだろうか?坊の津は昔 遣唐使がこの港から出かけたことで有名だが,現在は隣の枕崎に押されて,寂しい。夕食の材料を買ってきてさて,さて食事というときに,地元のおばさんが来て『おいしい食事処がある』と鈴木さんに話している。他の地元の人は食事処は何もないとオッシヤツタことは,トウに頭から消えていたみたい。すっかりその気になってお出かけ。シャワーを浴び食事が済んだころお帰りになり,カップめんを召し上がって,『何にもなかったので,途中でパンを買って食べた』とのこと。気の毒やら,おかしいやら。
6月17日 雨 天気予報通り雨,でも坊泊町全部が有線TVでは,ここにいても何もすることがないので,出港。朝のシーガルによれば,吐喝喇列島 宝島にいる『ドンタク』大雨洪水波浪警報が出て,モウ3日も動けないので,明日連絡船で奄美大島へ向かうようだ。雨は激しくなるは,真上りになるは,風も10m以上に上がるはで,今航海最悪の日,梅雨前線が北上しているので当然か。タックを10数回繰り返し山川港に入港。鈴木さんは早速タクシーにて指宿温泉へ,知覧を観光してお帰りになる。『flying』は雨が上がるのを,ここで待つことにして,溜まった洗濯物を持ってコインランドリーへ,買い物をして帰る。水は汚いは,引き波はすごいは,だが水道もあるし,電気もあるし,温水シャワー,洗濯機まで完備している。近くに温泉もあるし(無料シャトルバスつき)買い物も便利だ。夜,風が上がり、船が揺れて発泡スチロールの俵がギイギイ鳴いている。明日俵にロープを巻いて鳴らないようにしよう。