8月30日(日)佐久島一周レースが開催された。
佐久島一周レースは、例年、5月の第3日曜日に行うが、今年は、新型コロナの感染による緊急事態宣言が発出され、全国的な自粛モードの中、開催が中止になった。現在も感染が続いてはいるが、緊急事態宣言も解除になっていることだし、夏のうちにやってしまおうということで臨時開催されることになった。
9:00の艇長会議に先立ち、8:30からレース委員長によるレースのワンポイントレクチャーが開かれ、本を読んでもなかなか頭に入らない、本に書いてある通りにやっても思ったようにいかないなど悩みを抱えるヨットマンが集まり、熱心にレクチャーを聞いた。
そして、艇長会議。レースを待ちわびたヨットマンが集まり参加艇13艇という碧南ヨットクラブ単独レースではかつてないほどの参加艇の多さである。海の上では3密の心配もない。
スタート時には風が無いとの予報だったが、スタート海面に行ってみると6~8Knotほどの風が吹いている。11:00に矢作川河口ブイ付近でスタートとなり、各艇一斉に佐久島を目指してクローズホールドで船を走らせる。
風は次第に上がってきて、10Knotを超えるような風になってきた。ヨットレースにはもってこいの風である。
レース前のレクチャーで聞いた中くらいの風の時は、テルテールが全部流れなくても半分流れ、半分は上に上がる状態がいいという話を思い出し、半分が上に上がるようヘディングを上に登らせるとかなりの登りで進めることが出来た。他の艇は、ずっと東の方に進めており、浅瀬に突っ込むのでどこかでタックして西に進路を変えなければいけない。我々Adaはひょっとすると一度もタックせずに佐久島に入ることが出来るかもしれないとの期待を抱いた。さすがレース委員長のレクチャー、ご利益がある。
しかし、一色ブイを過ぎたあたりから水深計の数字が2mを切るようになるとさすがに不安になってくる。この時間、最干潮の時間だ。我々の前を「風小僧」が走ってはいたが、不安になり、クルーにタックを呼び掛けた。タッキング!!と進路を知多半島の方向に変える。先の方には、早めにタックして知多半島方面にいた先行艇のサザンウインドとシャンティーがタックして佐久島方面に方向を変えていた。
一発で佐久島と大磯の間に入れるところまで来たので、タッキング!!再び進路を佐久島に変える。クローズホールドでしばらく走ると本部艇が近づいてきて「コース短縮」と小島さんが叫ぶ。結構走れているのにコース短縮するのだなと思った。するとレース委員長がジブシートの引きが甘い。レクチャーで何を聞いとった!!と怒鳴る。女性クルーの力ではこれ以上引けないので、若者の男性クルーがギリギリとウインチを引く。するとまた本部艇が近づいてきてメインシートを少し緩めろと指導の声が飛ぶ。僅か3cmほど緩めるとスピードがぐっと増した。(なんで??)
後ろから追いかけてきていたAthenaをどんどん引き離す。佐久島と大磯の間にトップ艇のパーフェクトブレークとそれを追うSEED V、サザンウインド、シャンティーが見える。佐久島の陰には風小僧がいる。レース中盤に来てトップ艇を肉眼で追いながらレースできるのは初めてのことだ。いつもははるか水平線のかなたに消えている。これは面白い展開だと思っているとはるか後方にいたイビザがいつの間にかぴったりと後ろに付けている。やがてAdaを抜き去り、前に出た。あとからイビザを追いかける。佐久島東港を回り、北側に出るところでスピンを上げる。しかし、スピンがフォアステイに絡まりうまく行かない。一旦スピンハリを降ろして、絡まっていたスピンハリを離し、再度上げる。一応上がったが、方向が西に変わるのでジャイブしなければならない。ジャイブホー!と叫んでバウマンがスピンポールを入れ替えようとするが古いほうのアフターガイが外れず、苦労している。スピンシートを緩め、あれこれやってようやくスピンポールを入れ替えることが出来た。しかし、風が登りの方向に変わっている。さらに佐久島を過ぎたらコース短縮したゴールである生田ブイに向かえば、さらに登りの角度はきつくなる。スピンを降ろそうと言って、スピンを降ろしにかかった。苦労してスピンを降ろし、ジブを開くとはるか後方にいたはずのAthenaがすぐ近くに迫っていた。やばいな。と叫んで、ジブシートを引き込み、メインシートも引き込み、生田ブイの方向にヘディングを変える。するとAdaを抜いたAthenaは、矢作川河口ブイの方向に向かって進んでいる。馬鹿な奴らだな。コース短縮になったこと知らないな。あとから慌てて戻ってくるだろう、と笑って生田ブイめがけて進む。生田ブイが見えてきた。本部艇を探すが見当たらない。あれ、おかしい、不安になり本部艇に電話して「コース短縮ですよね」と聞くと「コース短縮はありません」と伝えたとのこと。あわわ、馬鹿な奴らはこちらだったのか。慌てて方向を変え、矢作川河口ブイめがけて船を走らせる。アビームで結構なスピードでAthenaを追いかける。Athenaは、ゴールの方向を間違えたのか、少し大回りしたようだ。これならひょっとして追いつけるかもしれない。やがてゴールラインが見えてきた。しかし、Athenaとの距離は、10艇身ほどあった。Athenaがゴールし、その30秒ほど後に我々のAdaがゴールした。
暑かった。スピンの失敗。ゴールの勘違い。様々なトラブルがあった。しかし、苦しい中、なんとかゴールできた。皆、満足感でいっぱいになった。楽しいレースでした。
レポーター:Ada 近藤史人