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スキッパーって何だ?

三河丸船頭 芝 豊造

  語源を調べてみた。
1390年代に、オランダの中西部で船のことをSchip(スキップ)と言い、船長をスキッパーと呼んだらしい。その後、イギリスでSchipのcが取れてShip(船)になったという。しかし、スキッパーという言葉はそのまま残り、意味も多様化してきた。小型船の船長、飛行機の機長、スポーツのチームリーダー等に使われている。
さて?ヨットのスキッパーって何だろう。
簡単に言えば、大きな権限と大きな責任のあるリーダーだ。
が…、どんな権限とどんな責任なの?と聞くと、ほとんどの人が明確に答えられない。
答えられないのが当然である。
ヨットはレーサーやクルージング艇、宴会船や本線並の大型船とか、実に多種多様だ。海上法規上の権限と責任は同じだが、その他では一艇一艇がすべて別々の条件下にある。
早い話、それぞれがオリジナルなスキッパーの定義を持つべきだ。
三河丸とパーフェクトブレイクとボヘミアンとフライングのスキッパーの定義が同じでは変なことになる。…とは思わない??
クルージング艇には参考になる事例があるので紹介しよう。
数十年前の化石のような話で申し訳ないが、学生ヨット界に、千葉大所属の「くろしお」というクルーザーがあった。彼らのスキッパーの決定方法はユニークで合理的であった。
一年生から三年生の三年間でスキッパー候補者を選別した。細かい数字は忘れたが、乗艇したログ数、昼間と夜間に出入港した港の数、レースの戦歴等の一艇の条件を満たしたものが候補者となり、OBと現役の学生を交えて選挙を行い決定したと覚えている。
選ばれた彼らは、人望もあり経験も豊富で、怪情報器やレースルールに精通していた。
そのころの艇長であった小池真は、年下であるが、ヨットマンとして、小生の師でもあった。
四年間という制約された時間が、彼らに合理的な方法を生み出させたのであろう。われわれ一般人は、金があって健康でさえあれば、何時でも何時までもヨットに乗れる。
HYCにも、だらけてしまって「スキッパーって、なあーに?」と、マジに聞きそうな怖い人が沢山居る。
スキッパーがいつも酔いつぶれている三河丸とか、クルーを落っことしてきた43ftとか、のり網をちぎってきた青い船とか。
まあ、色々あるが、自船のスキッパーについて、じっくり考えてみるのも悪いことではない。
                                                                                  おわり